賃貸で水漏れやつまりが起きたとき、修理そのものより頭を悩ませるのが「この費用、誰が払うの?」という問題です。結論から言うと、大原則は経年劣化なら貸主(大家・管理会社)負担、借りている人の使い方の過失なら借主負担。ただし実際は「どちらとも言い切れない」ケースも多く、だからこそ勝手に業者を手配せず、まず管理会社・大家さんに連絡することが何よりの鉄則になります。この記事では、負担の分かれ方をケース別に整理し、連絡の順番と伝え方、自分でやっていい応急処置の範囲まで、あとでもめないための実務をまとめます。※契約書(賃貸借契約・特約)で個別に定めがある場合はそれが優先されるので、最終的には契約内容もあわせてご確認ください。
・鉄則=まず管理会社・大家へ連絡(勝手に手配しない)
・原則=経年劣化は貸主負担/使い方の過失は借主負担
・分譲は専有部=自己負担・共用部=管理組合の範囲
・階下への水漏れは個人賠償責任保険が関わることがある
まず鉄則|勝手に手配せず、管理会社・大家へ連絡
水があふれそう、床が濡れていく——気が動転して、つい自分でネットで業者を探して呼びたくなります。ですが、賃貸で最初にやるべきは、管理会社(または大家さん)への連絡です。ここを飛ばすと、あとで費用をめぐって必ずと言っていいほどもめます。理由は3つあります。
- 費用の負担者を決めるのは、原則として貸主側だから:原因が経年劣化なら貸主負担になることが多く、その修理を誰にどう頼むかも、本来は貸主側が判断します。勝手に高い業者を呼んで「あとで払って」と言っても、認められないことがあります。
- 貸主が提携している業者がいることが多いから:管理会社は、決まった水道業者と契約していることがよくあります。まず連絡すれば、その業者を手配してくれて、費用の話もスムーズです。
- 連絡した記録が、あとで自分を守るから:「すぐに報告した」という事実が、被害が広がったときの責任の切り分けで効いてきます。
だから、緊急でも順番はこうです。①止水など、被害を広げない応急処置(後述)→②管理会社・大家へ連絡→③指示に従って業者手配。夜間や休日で連絡がつかない場合に備え、契約書や入居時の書類に緊急連絡先が書かれていないか、日ごろから確認しておくと安心です。連絡がどうしてもつかず、放置すると被害が広がる緊急時は、応急処置をしたうえで状況を記録し、つながり次第すぐ報告してください。
大原則|経年劣化は貸主負担、過失は借主負担
負担の分かれ方の背骨になるのが、この原則です。
- 経年劣化・自然故障 → 貸主(大家・管理会社)負担:長年の使用で配管やパッキン、設備が寿命で傷んだもの。これは「普通に住んでいれば避けられない老朽化」なので、建物を貸している側が直すのが原則です。給湯器の寿命は一般に10〜15年、配管も年数とともに劣化します。こうした設備そのものの寿命による不具合は、基本的に貸主側の負担です。
- 借主の使い方の過失・不注意 → 借主負担:本来流してはいけないものを流して詰まらせた、物を落として設備を壊した、といった「使い方の問題」で起きたものは、借りている人の負担になることが多いです。
考え方の軸は「その人が普通に住んでいて避けられたか」です。避けられない老朽化は貸主、注意していれば防げた過失は借主——この物差しで多くのケースは整理できます。ただし現実には「経年劣化と過失が混ざっている」ことも多く、その割合の判断でもめやすい。だからこそ、原因を自分で決めつけず、現場を見てもらって切り分けるのが大切です。次の章で、具体的なケースごとに見ていきます。

ケース別|どちらの負担になりやすいか
実際の相談で多いケースを、負担の傾向とあわせて整理します。あくまで一般的な傾向で、最終的には原因の判断と契約内容によります。
- 蛇口のパッキン劣化による水漏れ:長年使ってゴムパッキンが硬くなり漏れ始めた——これは典型的な経年劣化で、貸主負担になりやすいケースです。使い方の問題ではなく、部品の寿命だからです。
- 髪の毛の蓄積による排水のつまり:浴室・洗面で髪の毛や石けんカスが少しずつ溜まって流れが悪くなった場合。判断が分かれやすいところですが、日常的な使用にともなう蓄積とみなされることもあれば、清掃を怠った結果とされることもあります。ここは管理会社と相談して切り分けるのが無難です。
- 異物を落として詰まらせた:トイレにおもちゃ・生理用品・お尻ふきなどを流した、物を落とした——これは明確に使い方の過失で、借主負担になりやすい典型です。
- 油や食材カスをそのまま流し続けたキッチンのつまり:本来避けるべき使い方の積み重ねなら、借主側の責任を問われやすくなります。
- 設備そのものの寿命(給湯器の故障・配管の老朽化):機器や配管が寿命で壊れたもの。経年劣化として貸主負担になりやすいケースです。
ポイントは、「部品・設備の寿命」なのか「使い方の問題」なのかで線が引かれるということ。判断に迷うグレーなケースこそ、自分で決めつけて業者を呼ばず、管理会社に原因を確認してもらってください。つまりを自分で試せる範囲はトイレ・キッチンの記事にありますが、賃貸ではまず連絡が先です。
分譲マンションの場合|専有部と共用部
賃貸ではなく分譲マンションを所有している場合は、負担の分かれ方の軸が変わります。ここでは専有部か共用部かが判断のカギになります。
- 専有部(自分の部屋の中)→ 自己負担:室内の蛇口、部屋の中の露出した配管、自室内の設備など、自分の所有・管理の範囲で起きたトラブルは、原則として自己負担で直します。
- 共用部(建物みんなで使う部分)→ 管理組合の範囲:建物全体を貫く縦管(排水の本管)など、共有の配管が原因なら、管理組合が加入する保険や修繕の範囲で対応することが多いです。
難しいのは、専有部と共用部の境目です。壁の中や床下の配管は、どこからが共用部かの判断が分かれることがあり、マンションごとの管理規約で線引きが決められています。原因がどちらにあるかは現場で見て分かることが多いので、まずは管理会社・管理組合に連絡し、切り分けてもらってください。当社(Lifecare24)でも、専有部か共用部かの切り分けのご相談に応じられます。自分の判断で共用部を勝手に工事すると、あとで規約上の問題になることもあるので注意してください。
階下への水漏れ|個人賠償責任保険という備え
賃貸・分譲を問わず、いちばん深刻なのが自分の部屋の水漏れが階下の住戸まで被害を及ぼすケースです。下の階の天井・壁・家財を濡らしてしまうと、他人への賠償という話になります。ここで関わってくるのが個人賠償責任保険です。
個人賠償責任保険は、日常生活で誤って他人にケガをさせたり、他人のものを壊したりしたときに備える保険で、火災保険や自動車保険などの特約として付いていることが多いものです。階下への水漏れで、下の階の住民に損害を与えてしまった——そんなときに、この保険が関わってくることがあります。賃貸なら入居時に加入した保険に特約として付いていることがあるので、証券を確認してみてください。
ただし、これも「必ず全額出る」ものではなく、原因や状況、契約内容によって扱いが変わります。使えるかどうかを判断するのは保険会社です。詳しくは水漏れは火災保険で直せる?もあわせてご覧ください。階下に漏らしてしまったら、まず管理会社・大家へ連絡し、下の階の方への対応や保険の使い方も、勝手に進めず相談しながら進めるのが安全です。
連絡の順番と、伝え方のコツ
いざ管理会社・大家に連絡するとき、伝え方が整理されていると、対応が一気にスムーズになります。慌てているときほど、次の順番と内容を意識してください。
連絡の順番
- 止水など、被害を広げない応急処置をする(後述)
- 管理会社・大家に連絡する(緊急連絡先が別にあればそちら)
- 指示に従い、手配された業者を待つ/自分で手配してよいか確認する
伝えるべき内容
- どこで、何が起きているか:「洗面台の下から水が漏れている」「トイレを流すと水位が上がって流れない」など、場所と症状を具体的に。
- いつからか・どのくらいの量か:急に始まったのか、じわじわか。ポタポタか、床が濡れるほどか。
- 止水など、いまやった応急処置:「元栓を締めた」など、現状を共有します。
- 階下など、他への影響の有無:下の階に漏れていそうなら、必ず先に伝えてください。
そして、電話でのやりとりは日時と、言われた内容をメモに残すこと。「いつ連絡し、どう指示されたか」の記録が、あとで費用の話になったときに自分を守ります。可能なら、被害の様子を写真に撮っておくと、原因の切り分けや保険の申請でも役立ちます。
自分でやっていい応急処置の範囲
業者や管理会社の対応を待つあいだ、被害を広げないための応急処置は、借主が自分でやってよい範囲です。ただし「直そうとする」のではなく「止める・広げない」に徹するのがコツ。触りすぎて悪化させると、その分が過失として自分の負担になりかねません。
やってよいこと(止める・守る)
- 止水する:水漏れなら、その設備の止水栓(蛇口の下やトイレ横などにある小さなバルブ)を締める。分からなければ、家全体の元栓(止水栓/メーターボックス内)を締めれば、とりあえず水は止まります。これがいちばん大事な応急処置です。
- 床や家財を守る:漏れた水をタオルやバケツで受け、家具・家電を濡れない場所へ移す。
- 被害を記録する:片づける前に、濡れた場所や原因箇所を写真に残す。
やらないほうがいいこと(悪化させる)
- 詰まりに熱湯を流す(便器や塩ビ配管が割れる・変形するおそれ)
- 異物をさらに押し込む(奥へ送り込むと作業が大がかりになる)
- 固着した部品を力任せに回す・分解する(漏れを増やす)
- 合わない部品を無理にはめる、自己判断で共用部を工事する
要は、「水を止めて、被害を広げず、記録する」までが借主の応急処置。そこから先の修理は、管理会社の指示のもとプロに任せるのが、結局いちばん安く・もめずに済みます。自分で直せる範囲の目安はトイレのつまりを自分で直す方法にありますが、賃貸では手を出す前に必ず連絡を優先してください。

よくある質問
Q. とりあえず自分で業者を呼んで、あとで大家に請求してもいいですか?
おすすめしません。負担者を決めるのは原則として貸主側で、勝手に手配した費用は認められないことがあります。まず管理会社・大家に連絡し、指示を受けてください。
Q. 経年劣化か過失か、自分では分かりません。
無理に自分で判断しなくて大丈夫です。原因の切り分けは現場を見て判断できることが多いので、管理会社に連絡して確認してもらってください。当社でも切り分けのご相談に応じられます。
Q. 髪の毛のつまりは、借主と貸主どちらの負担ですか?
判断が分かれやすいケースです。日常的な使用にともなう蓄積とみなされることもあれば、清掃を怠った結果とされることもあります。管理会社と相談して切り分けるのが無難です。
Q. 下の階に水漏れしてしまいました。どうすれば?
まず止水し、すぐに管理会社・大家へ連絡してください。階下の方への被害は、個人賠償責任保険が関わることがあります。勝手に進めず、相談しながら対応するのが安全です。
Q. 夜間や休日で管理会社に連絡がつきません。
まず止水などの応急処置で被害を止め、状況を写真で記録してください。緊急連絡先が契約書にないか確認し、つながり次第すぐ報告を。放置で被害が広がる緊急時は応急処置を優先しつつ、必ず記録を残してください。
Q. 分譲マンションの共用部が原因のときも、自分で払うのですか?
建物共有の配管(縦管など=共用部)が原因なら、管理組合の範囲で対応することが多いです。専有部か共用部かは現場で切り分けます。まず管理会社・管理組合へ連絡してください。
Q. 契約書に「借主負担」と書いてあったら、経年劣化でも払うのですか?
契約(特約)の内容が優先されることがあります。書き方によって扱いが変わるため、契約書を確認したうえで、疑問があれば管理会社に相談してください。
まとめ|迷ったら、まず連絡と応急処置
賃貸の水漏れ・つまりの費用は、経年劣化なら貸主、使い方の過失なら借主が大原則。分譲なら専有部は自己負担、共用部は管理組合の範囲。そして階下への被害には個人賠償責任保険が関わることがあります。ただし、原因が混ざったグレーなケースも多く、負担の割合でもめやすい——だからこそ、自分で決めつけて手配しないことが最大の防御になります。
やることの順番は、どんなときも同じです。①止水など、被害を広げない応急処置をして、②管理会社・大家へ連絡し、③指示に従って業者を手配する。この3ステップと、連絡の記録・被害の写真さえ押さえておけば、あとで費用をめぐって大きくもめることは、ほとんどなくなります。
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